バードウォッチングを始める方のなかには、野鳥の鳴き声から名前がわかったらと始める方も多いと思います。ところが、バードウォッチングの壁のひとつが鳴き声だと思います。また、調査をしていると、鳴き声からの発見が70%になることもありました。さらに、最近では鳴き声が違うということから亜種、あるいは種の検討が行われるようになり、鳴き声への関心が高まっています。音でコミュニケーションをしている鳥なのですから、鳴き声は重要です。
この鳴き声をおぼえるコツは、いろいろありますが、おすすめしているのは録音です。たとえば、オオルリは30分はさえずり続けます。これを聞きながら録音して、家に帰って聞き直し、CDに焼いてまた聞くということをやれば、おぼえること間違いありません。現在、高性能で簡単便利安価なICレコーダーが普及してきましたので、野鳥録音にチャレンジしてみてください。また、野鳥録音は皆とおなじように写真を撮ることに飽きた方、人とは違うことをやりたい方には、おすすめです。
もうひとつのコツは、鳴き声の音色をおぼえることです。聞きなしは節のイントネーションは伝わりますが、音色はわかりません。たとえば、冬と夏ではヒヨドリの鳴き方は大きく変わります。でも、ベテランは音色をおぼえているため、夏でも冬でもヒヨドリとわかるのです。ところが、初心者に「あれは何ですか?」と聞かれ「ヒヨドリです」、しばらくして「これは?」「ヒヨドリ!」となります。これは、音色でおぼえていないからです。
音色は、音の高さ、幅、倍音などのいろいろな要素がなさなり合って、いろいろな音に聞こえます。ところが、音色を表す言葉がないのでなかなか伝わりません。図鑑にあるようなカタカナ書きの鳴き声では、伝わらないのです。
実は、ベテランでも音色が同じでも節が違うとかなり迷います。かくゆう私も、北海道のセンダイムシクイがわかりませんでした。「チヨチヨ」と鳴き続け「ビー」はあまりやらないからです。また、兵庫県北部の山で聞いたオオルリも、地元の人に教えてもらうまで「?」でした。しかし、良く聞くと音色が同じなので納得できました。逆に言えば、関東地方で録音したオオルリなどの声がCDに収録されていても、西日本の人にはわかりにくいことになります。
このように野鳥は、地方差があります。さらに、さえずりや地鳴き、雌雄、成鳥・幼鳥・雛、さらにはねぐら入りの声など、さまざまです。
今回、日本野鳥の会で製作したCD『鳴き声ガイド日本の野鳥』は、377種(亜種含む)ですが、バリエーションは800件を超えています。そのため、CD6枚で6時間40分を超えるデータ量となっています。まずは、聞き流すことで鳥の声の音質になれることからはじめていただき、声の図鑑として活用してもらえればと思います。
なお、CDにはリーフレットが付いています。音源一つひとつの収録年月日のほか、声の種類が書かれています。これには「地鳴き」という言葉をいっさい使わず、行動や状況を書いています。そこから鳴き声の意味がわかり、よりバードウォッチングの幅を広げていただければと思っています。
また、収録の順序は『増補改訂新版 フィールドガイド日本の野鳥』に対応しています。図鑑を見ながら鳴き声を聞き、おぼえるという学習法も可能です。どうぞこのCDから、野鳥たちの鳴き声の魅力を楽しんでいただければと思います。 松田道生
『鳴き声ガイド日本の野鳥』のメーキングを拙ブログで連載いたしました(タイトルをクリック)。
・完成!
・800件の音の統一
・鳥の名は。
・謎の解決と新たな謎
・典型とはなにか
・価値ある音源
・さえずりの定義
・地鳴きをやめたらすっきり
・『フィールドガイド日本の野鳥』との対応
・皆さまのおかげです
・10年やればできる
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