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カラス先生のはじめてのいきもの観察

 自著の紹介ばかりが続いて大変恐縮なのだが、今回、太田出版からこのような本を上梓することができた。
 タイトルは自然観察のハウツー本っぽいが、中身は子供の頃を中心としたエッセイのようなものだ(にしては少々、動物の解説が多いが)。これは出版社の意向である。「読み物だが、読むことで自然観察のやり方もわかる」ということらしい。わかる…… か? ビーチサンダルで石畳の柳生街道を駆け下りたとか、アブラコウモリを手づかみしたら噛まれたとか、イノシシ道を辿ったとか、かなりおかしな経験ばかり書いているような気がするが。双眼鏡や図鑑についての章は、これから鳥を見てみようという方にとって、多少はお役に立つかもしれない。

 むしろ、書きながら私が思い描いていたのは夏休みである。四十年まえの夏休み。あの頃は毎日、田んぼで遊んでいればよかった。カエルもトンボもヘビもいっぱいいた。その中で野良ガキどもは育った。
 もちろん、それを過剰に美化するつもりはない。「今時の子供は」と紋切り型の繰り言を述べる気もない。ただただ、あの夏の空も、頭まで埋もれてしまう草いきれも、バッタが飛び立つ音も、素足で踏んだ泥の感触も、みな楽しく懐かしいという思いだけである。
 夏の思い出を胸に抱く大人に、そして、これから「大ぼうけん」に飛び込んで行く子供達に。松原 始

      カラス先生のはじめてのいきもの観察 松原始 
      太田出版 1,500円
      ISBN: 9784778316310

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