「カラスの教科書」を上梓してから3年ほどたった。「~教科書」はカタいことはなるべく書かずに、誰でも読めて「カラスって意外とカワイイ~」と思ってもらえる本を目指したのだが、幸いにして望外のご好評を頂き、多少はカラスに対する印象を改善したのではないかと自負している。その一方、あれではカラスについてまだ語れていない、カラスを生物学として語れていない、という悩みもあった。みなさんの書評や感想を拝見しても、そう感じることがあった。
曰く、「もうちょっとアカデミックなところも読みたかった」 書いたらとんでもない分量になるし、読者を絞ってしまうので……
曰く、「カラスには紫外線センサーがあるんだって!」 カラスには、じゃなくて鳥はみんな見えてますってば! でも、そこに触れると感色素とか4原色型とかユクスキュルとかそういう話がどうしても……
いや、原稿の段階ではもっと書いていたのである。だが、ページ数の都合でかなり削ったし、小難しすぎるので書くのを諦めたところもある。カラスだって動物の一種だからと鳥一般、動物一般の話まで書き始めるとあと数百ページ……いやもっと……必要だ。
ということで、今回の「カラスの補習授業」では「教科書」に収まり切らなかった周辺部分や、少し掘り下げた部分を、書かせて頂くことにした。「教科書」の隠れた統一テーマは「食べる」ことだったのだが、今回は「つながる」ことだ。テーマのつながり、生物同士のつながり、個体間のつながり。くだけた言い方をすれば、「そうそう、◯◯と言えばね」という、アレである。
そうして出来上がったのは、前作より少し理屈っぽくて、しかも趣味全開な本である。しまった、これは補習授業じゃない。補習とはあくまで「教科書を読んだがよくわからない」部分を、時間をかけて丁寧に教えるものだったはずだ。これではまるで、放課後にわからない所を聞きにいったら、もっとワケのわからない話をまくしたてられて余計に混乱してしまうようなものではないか。いっそ「カラスの強化書」とした方が良かったか。でもそれでは電話注文などする時に「教科書」と「強化書」を区別できなくて不便だ。表紙の誤植と思われても困る。
仕方ない。カラス馬鹿が話を始めたら止まらなくなってしまった、そういう事にしておこう。あまりに趣味が全開で意味のわからない箇所もあるかもしれないが、そこは許してほしい。わかる人は同志と呼ばせて頂こう。なんだかわからなくてモヤモヤしたら、註釈を参考にしてネットか本屋で調べてみてほしい。だいたいの元ネタは、見つかるはずだ。そして、カラスから広がる色々な世界を感じて頂ければ幸甚である。 松原始
「カラスの補習授業」
松原始 著
¥1728(本体¥1600+税)
ISBN 978-4-8441-3686-6
雷鳥社
参考「カラスの教科書」
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