2年前、バードウォッチャーが主人公の映画『ビッグボーイズ』が各地で上映されました。その原作はドキュメントでしたが、小説でバードウォッチャーが活躍するものはないだろうかと調べたら、面白そうな作品があったので図書館で借りてきました。
そのタイトルが『ワタリガラスはやかまし屋』。創元推理文庫から出ているミステリー小説です。
休暇を過ごすためにコロラド州の叔母の家へやってきた女性が殺人事件に巻き込まれ、バードウォッチャーたちと一緒に解決するというストーリー。
珍鳥(シロスジヒメドリ)を探しに出かけた山中で、主人公が死体を発見します。被害者は猛禽類の不正輸出を追及していた野鳥雑誌の記者。猛禽のリハビリ施設を運営している叔母が犯人ではないかという疑惑が生まれたり、証拠品のCDをワタリガラスがくわえて巣に持ち運んだり、ストーリーのすべてが鳥がらみ。登場人物も刑事以外はほとんどがバードウォッチャーかレンジャーです。
面白いと思ったのは、鳥をおびき寄せる「ピッシュアウト」という方法。登場人物のセリフをそのまま書くと、「ピッシュアウトというのはバードウォッチャーの用語で、おしっこに似た音をたてることをいうの。そうやって、藪に潜んでいる野鳥を誘い出すのよ」。
作品の中でもシロスジヒメドリをおびき寄せるために、「クシュクシュクシュ」と音をたてています。
事件のきっかけとなるシロスジヒメドリ(Photo by Laura Erickson)
結局、犯人は叔母さんではなく、環境保護の過激派。日本では聞きませんが、アメリカには環境保護や動物愛護のために暴力も辞さないグループが存在し、「エコテロリズム」と呼ばれているようです。反捕鯨活動でよく報道される「シーシェパード」もその一つ。
作者のクリスティン・ゴフはバードウォッチャー・ミステリーを5冊書いていて、うち2つが翻訳されています。もう1冊の『違いのわかる渡り鳥』も読みましたが、いずれもストーリー展開が面白く、バードウォッチャーにはたまらないミステリーです。
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