龍谷大学で鳥類学者・中村浩志さんの講演が行われました。学生向けの特別講演ですが、一般にも公開されたので聴講してきました。
今回は、「進化が確認できるカッコウの托卵研究」と「二万年の奇跡を生きた鳥ライチョウ」の2本立て。どちらも興味深いものでしたが、ライチョウについてご紹介します。
日本では信州あたりの高山に登らないとこの鳥には出会えませんが、ヨーロッパでは身近な場所に生息していて、現在でも狩猟鳥、つまり食料になっているそうです。
そのため、警戒心が全くない日本のライチョウとは対照的に、ヨーロッパのライチョウは人が近づくとすぐに逃げるとのこと。
スコットランドのライチョウ(画像はパブリックドメイン)
日本では特別天然記念物として保護されているので、「ライチョウを食べる」なんて考えられませんが、中村さんはノルウェーの雑誌を紹介しながら、ヨーロッパでは普通のジビエ料理であることを強調されていました(下はパワーポイントの画像)。
ところで、日本にはもう一つのライチョウがいます。北海道に生息するエゾライチョウで、こちらは狩猟鳥。つまり、日本でもライチョウを食べているのです。
食料にするほどたくさん生息していればいいのですが、ご多分にもれずエゾライチョウも激減しています。狩猟数では、1920~1950年代の5~6万羽が、1990年代には1千~2千羽に減少。道が行った生息密度調査でも、1994年から1996年にかけて、例えば阿寒湖畔では100ha当たり3.9羽から1.0羽に減っています。
環境省のレッドリストでは「情報不足」ですが、北海道は「希少種」に指定しています。その道庁が、自らのホームページに「蝦夷雷鳥の蕎麦」を採り上げ、「上品で良い出汁がでます。蕎麦やお雑煮、もち米と炊いてサムゲタン風にしてもおいしいです」と記載していたことが問題になって、すぐに削除されたそうです。
エゾライチョウ(画像はパブリックドメイン)
そんな希少な野鳥をわざわざ探し出して、撃ち殺して食べる必要はどこにもないでしょう。
似たような話は他にもあって、キジは日本の国鳥でありながら狩猟鳥ですし、ヤマシギも京都府以外では狩猟鳥。猟友会の圧力もあって、数が減ってもなかなか狩猟対象から外されません。
もう一つの要因は行政の怠慢というか不作為。例えば、エゾライチョウは北海道にしか生息しないにもかかわらず、なぜか京都府の狩猟対象鳥としてリストアップされています。当支部が何度も削除を申し入れていますが、いまだに残ったまま。こんなことを続けているうちに、いろんな鳥が絶滅危惧種になるんでしょうね。
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