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翡翠

「翡翠」と書けば、一般的には宝石のヒスイと解釈されますが、バーダーは「カワセミ」を思い浮かべます。「翡翠」にはヒスイとカワセミの両方の意味があるからです。共通点は美しい青緑色。
ここでクイズ。この「翡翠」という漢字は、先に宝石につけられ、後からカワセミに転用されたのか、その逆か、どっちでしょう? 答はこの漢字の部首がどちらも「羽」であることに着目すれば分かりますね。

普通、鳥の名前を表す漢字は「鴨」や「鷲」など「鳥」が部首になっていますが、「翡翠」のように「羽」を部首にした漢字は他にはないのではないでしょうか。それだけ、古代の中国人はカワセミの羽の色を称賛していたということでしょう。
しかも、「鴨」や「鷲」と違って「翡翠」は2文字です。これにも訳があって、「翡」はオスの、「翠」はメスのカワセミを表します。下の動画は下のクチバシが赤いので「翠」です。

    

雌雄一対で鳥の名前を表す漢字がもう一つあります。鴛鴦(オシドリ)。中国読みは「えんおう」で、「鴛(えん)」がオス、「鴦(おう)」がメスです。
「オシドリ=夫婦円満」というアイコンは中国で生まれたものですが、それが熟語の生成に表れているのかも知れません。
ちなみに、実在の動物ではありませんが、「鳳凰」は「鳳」がオス「凰」がメス、「麒麟」も「麒」がオス「麟」がメスだそうです。

このことを知って、「鶺鴒(セキレイ)」も雌雄を意味しているのではないかと推測しました。イザナギとイザナミがセキレイの動きを見て子どもをつくる方法(つまり生殖行動)を知ったと『日本書紀』に書いてあるからです。
図書館に出向いて諸橋版の『大漢和辞典』で確認したところ、この推測は外れでした。その代り、いろいろ面白いことも分かりました。

例えば、中国には「翠天」という熟語があって、「青い空」を意味するそうです。古代中国では「カワセミ=青」というアイコンが成立していたようです。だから、ヒスイにもカワセミを意味する「翡翠」の文字を当てたわけです。
カワセミを「飛ぶ宝石」と呼びますが、これは逆で、ヒスイを「飛ばないカワセミ」とか「羽のないカワセミ」と呼ぶべきなんですね。

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