「鳥脳力」
小さな頭に秘められた驚異の能力
道具をつくり,ピカソの絵を見分け,バッハを好み,言葉も理解できる.鳥脳はなにをしていて,訓練次第でなにができるようになるのだろうか.「小さくても高機能」な鳥脳の魅力を,さまざまな実験によって紹介しながら,心の理解に向けた知的探求の書.
著者: 渡辺 茂 著
発行: 2010年 4月10日
ISBN: 9784759813326
定価 本体1,700円+税
DOJIN選書
株式会社 化学同人
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目次
まえがき(なぜ心理学者が動物の研究をするのか モデル動物から行動の多様性へ 鳥脳の魅力)
第1章 鳥――絶滅しなかった恐竜
一 始祖鳥の発見とその後の鳥たち(始祖鳥から遼寧鳥へ 現代鳥への系譜)
二 始祖鳥以前の話(鳥の祖先 現代鳥へ)
三 羽は見せるためのものか、飛ぶためのものか(始祖鳥は飛んだか 羽はなんのためにあるのか)
四 恐竜を復元するには
第2章 鳥脳とはなにか
一 鳥脳と哺乳類脳――どこが似ているか(大脳が大きい)
二 これが鳥脳の謎だ! その1――DVRとはなにか(鳥脳の特徴 中脳が発達することの利点 鳥脳はなぜ中脳が発達したか)
三 これが鳥脳の謎だ! その2――鳥型視覚脳(鳥の視覚システム 視覚認知に重要な部位)
四 なぜ鳥脳は誤解されたのか
第3章 鳥脳はものを憶えられないか
一 生まれてすぐの経験と親子の絆
二 刻印づけによる自種認知(自種に対する愛着は生得的 記憶形成の脳内部位)
三 短い記憶と長い記憶(ハトは10秒過ぎれば忘れる? 餌の位置の記憶 二年近く記憶できるハト)
四 長期空間記憶と海馬(脳細胞は新生する 海馬損傷と空間記憶の関係 海馬の役割)
五 過去への心的時間旅行――鳥の思い出(記憶の種類 カケスのエピソード記憶 鳥にも思い出はあるか)
六 未来への時間旅行――朝食の支度をするカケス
第4章 道具をつくる鳥脳
一 道具を使う動物たち
二 道具使用の古典的実験(棒でスイッチを押すカラス 踏み台を使うハト)
三 ニューカレドニアカラスの道具使用と道具作成(木の枝を細工するカラス 針金を加工するカラスのベティ 学習・経験の可能性 ニューカレドニアカラスだけなのか)
四 なにが道具の作成に必要か
第5章 鳥脳のナヴィゲーション・システム
一 伝書鳩の歴史(伝書鳩の盛衰 伝書鳩の脳)
二 太陽コンパスによるナヴィゲーション
三 磁気ナヴィゲーション(磁気弁別実験 磁気検出装置は体のどこにあるか 磁気感覚の本体)
四 視覚ナヴィゲーション・システム(帰巣航路の測定 GPSの利用 路線情報 夜間飛行とクラスターN)
五 鳥脳に地図はあるのか(聴覚地図 嗅覚地図 地図のための脳内機構)
第6章 鳥脳に「美」を教える
一 鳥脳を解放する(ハト脳の解放実験――コロンバン・シミュレーション 生物学的制約から解放できるか)
二 美の進化的基盤(美しさはなぜ好まれる 動物たちの芸術活動)
三 絵画を見分けさせる(ハトにモネとピカソの絵を見分けさせる 弁別の手がかりはなにか ゴッホとシャガールではどうか 水彩画とパステル画の区別 上手か下手かの判断)
四 鳥脳は絵画を楽しむか
五 やはりヒトとは違う(ハト脳はバラバラになったチャーリー・ブラウンがわかる 三次元から二次元への変化の認知)
第7章 鳥脳に「音楽」を教える
一 音楽の理解または弁別(バッハとストラヴィンスキーを聴き分ける ブンチョウはバッハとシェーンベルクを聴き分ける 和音と不協和音が手がかり?)
二 鳥脳は音楽を楽しむか(ハトは音楽を楽しまない ブンチョウはシェーンベルクが苦手?)
三 小鳥の歌は音楽か?――音楽の産出
四 音楽に合わせて踊るオウム
第8章 鳥脳に「論理」を教える
一 適応、合理、論理(鳥脳のコンコルド効果 ハトのカード分類作業)
二 鳥は人間の論理を理解するか(「AはAである」 「AはBである」と「AならばB」 推論 推移的推論 刺激等価性)
第9章 鳥脳に「言語」を教える
一 ハトどうしのコミュニケーション
二 鳥脳に音声言語を聞き分けさせる
三 鳥脳に英語を教える(オウムの言語能力 オウムのおしゃべりに意味はあるか)
四 鳥脳に文法はあるか(ジュウシマツとキンカチョウのもつ文法 鳥の文法、ヒトの文法 音声文法は学習するものか 文法の起源)
第10章 鳥脳に「自己」を教える
一 内部環境の認知
二 哺乳類は鏡のなかの自分がわかるか
三 鳥に鏡を見せる(ハトとカラスは自己像を認識できるか 鏡のなかの自分がわかるカササギ 鳥は鏡を好むか 鳥脳に鏡像認知を訓練する)
四 ハトにモニター自己像を訓練する
エピローグ
参考文献
あとがき