以前、「タカの季節感」と題して、「鷹渡る」や「鷹柱」は秋の季語、「鷹」や「鷹狩り」は冬の季語であるとご紹介しました。では「鷲」はどうなんだろうと気になって調べたら、これも冬の季語でした。
鷲の俳句を探してみると、有名どころでは高浜虚子の次の句がありました。
大鷲の 嘴(はし)にありたる ぬけ毛かな
オオワシがカモか何かを捕え、羽根をむしって食べた後、羽毛の一部がクチバシに付いているところを詠んだのでしょう。リアルというか、生々しいというか、「客観写生」を唱えた虚子らしい句です。
それにしても、こんなディテールは肉眼では見えないはずで、双眼鏡か望遠鏡で観察したのではないでしょうか。ということは、虚子はバーダーだったのかも知れません。
下の動画の後半はオオワシがカイツブリを捕獲し、食べ終わったところ。クチバシに羽毛は付いていませんが、爪は血で赤くなっています。
虚子の句を盗作すると
大鷲の 爪にありたる 血糊かな
ところで、「大鷲」や「尾白鷲」は冬鳥なので冬の季語というのは理解できるのですが、「犬鷲」も冬の季語だそうです。イヌワシは留鳥なので、バードウォッチャーには納得しにくい季語です。
ところが、高浜虚子の師匠である正岡子規は次の句を詠んでいます。
鷲の子の 兎をつかむ 霰(あられ)かな
この句の季語は「鷲」ではなく「霰」とのこと。ウサギを捕食するのはイヌワシでしょうから、子規はイヌワシを冬の季語とは考えていなかったことになります。
俳句のルールをよく知りませんが、詠む人によって季語が違うこともあるのでしょうか。
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