平安時代、御所で毎晩不気味な声が響き、恐怖におののいた天皇が病気になったため、弓の達人・源頼政が退治した。その怪物は、顔が猿、胴体が狸、手足が虎、尾が蛇、声は鵺(ヌエ)のようであった…。『平家物語』に記されているそんな伝説にちなんで、今回はヌエ(トラツグミ)をテーマに探鳥会を開催しました。
怪物ヌエの正体トラツグミ
このヌエ伝説には後日談があって、たたりを恐れた都の人々はヌエの死骸を船に乗せて鴨川に流し、それが下流の淀川に流れ着くと、周囲の村人はねんごろに葬り、鵺塚を建てて弔ったという話が残っています。大阪の都島にはその鵺塚が残っています。
大阪市都島区にある鵺塚
しかも、この伝説にちなんで、大阪港の紋章には、顔が猿、胴体が狸、手足が虎、尾が蛇の怪物ヌエが描かれています。
ヌエをモチーフにした大阪港の紋章
というような説明の後、47名の参加者をベテラングループと初心者グループに分けて探鳥会をスタート。いつもの探鳥会とは少しルートを変更し、下見で確認した5カ所のトラツグミポイントを中心に歩きました。
近衛池付近で早くも怪物ヌエが登場。初心者グループのメンバーは初めてとあって、じっくり観察されました。桂宮邸跡の枯れ木にはアオバトが10羽ほど。下見では登場しなかったので、思わぬご褒美となりました。
初心者グループには6歳の少女がご両親と一緒に参加してくれました。この日が探鳥会デビューというのに、モズの雌雄を識別するわ、「ジョウビタキはカッカッって火打ち石みたいな声で鳴くからヒタキって言うんだよ」と解説してくれるわ、ベテラン会員顔負けの知識を披露してくれます。驚いてお母さんに聞くと、「絵本代わりに3冊の鳥の図鑑を読みふけっています」とのこと。
私が「ハクセキレイがいる」とスコープで見せると、「セグロセキレイだよ」と言うので、良く見るとセグロでした。以降、この少女を「A先生」と呼びながら、秘書役に徹しました。
イカル観察中のA先生
ベテラングループはトラツグミを7個体、雄のルリビタキも3個体発見したようですが、初心者グループはルリビタキは雌タイプのみ。それでも、みなさん「可愛い~」と言いながら、枝に止まってじっとしているルリビタキに見入っていました。
解散地点の九条池では、お約束通りカワセミが登場。A先生にとって実物との出会いは初めてですが、「クチバシの下が黒いから雄だよ」と冷静に識別されていました。脱帽!
ご家族で入会していただけるようで、またどこかの探鳥会でA先生に会うのが楽しみです。
ルリビタキ雄を待ちながら鳥合わせ(青い鳥は解散後に登場しました)
京都御苑探鳥会 2017年年1月29日 K.S wrote
●見聞きした鳥 天候:
キジバト、アオバト、アオザギ、コサギ、トビ、ハイタカ、カワセミ、コゲラ、アオゲラ、モズ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ヤマガラ、シジュウカラ、ヒヨドリ、ウグイス、エナガ、メジロ、ムクドリ、トラツグミ、シロハラ、アカハラ、ツグミ、ルリビタキ、ジョウビタキ、スズメ、ハクセキレイ、セグロセキレイ、ビンズイ、アトリ、カワラヒワ、シメ、イカル、カシラダカ、アオジ 35種
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