現代音楽の作曲家、オリビエ・メシアンは『鳥のカタログ』など野鳥をテーマにした作品をいくつか遺しています。鳥類学者でもあったようで、鳥のさえずりをそのまま楽譜にするというユニークな方法で作曲しています。
親日家でもあったらしく、鳥の声を採譜するために軽井沢を訪れています。その際に案内した野鳥の会の会員が以下のように記しています。
「先生はじっと鳥の鳴き声を聞いておられたかと見る間に、5線譜の上に、1小節ずつ書いていかれるのであった。特にキビタキとクロツグミにはいろいろな替え歌があって、われわれ野鳥の会員の間でも、いくら教えても覚えられないほど難しい鳥であるにもかかわらず、先生はすらすらと譜面上に書いてゆかれるので驚いてしまった」。
そして、録音テープから採譜することを勧めると、メシアンは次のように断ったそうです。
「鳥が鳴き、嘲るのは皆それぞれレパートリーがあって、ただ勝手に鳴くのではありません。だからフィールドで実際に聞かなければ、強弱や鳴くタイミングがわかりません」。
このあたりが、単なる作曲家ではなく、鳥類学者兼作曲家である所以でしょう。
その作曲の様子がYouTubeにアップされています。
軽井沢で採譜した後にメシアンに会った小沢征爾は次のように述懐しています。
「彼は採譜した野鳥の歌の譜を私に見せてくれた。それは実に詳細なもので、例えばウグイスの声をただそれだけ記譜してあるのではなく、一斉に嘲る野鳥のコーラスを、まるでオーケストラ・スコアのように、同時に書きとめているのである」。
このときに採譜された鳥の声が、後に『軽井沢の鳥たち』という作品になっています。
鳥の声に関心のある人は、メシアンの作品をチェックした方がよさそうですね。
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