作家・池澤夏樹が『最後の一羽』という小説を書いています。北海道のシマフクロウをテーマにした短編です。
人間の自然破壊によってシマフクロウがついに絶滅するというストーリーで、たとえば以下のような記述が出てきます。
「二本足の動物が巣のある木の下まで来た日、ついに彼らは巣を放棄した。二つの卵はそのまま死んだ。奇妙な生き物たちの騒ぎはなおも続き、やがてもっとすごい音をたてる大きなものが来て、立派なミズナラの木をつぎつぎに倒して運び去った」。
これを読んで、城陽市の鎮守の森で毎年営巣していたフクロウがオーバーラップしました。今年も繁殖のためにやってきたのですが、フォトグラファーが夜フラッシュ撮影を繰り返したために営巣を放棄したそうです。
下の動画は2年前に撮った同じフクロウとそのヒナ。
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野鳥にとっては人間の自然破壊だけでなく、マナー違反も脅威になるわけです。
シマフクロウは現在、環境省のレッドリストでは絶滅危惧ⅠA(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)に指定されていて、日本野鳥の会が保護区を設けたり、巣箱を掛けたり保護に取り組んでいます。
まだ「最後の一羽」という状況には陥っていませんが、そういう活動を続けないとこのフィクションがノンフィクションになるわけです。
この作品には別の人間集団も登場します。
「むかしはあの生き物たちもあんなにうるさくはなかった。(中略)その生き物たちの大きな巣がいくつも並んだ川辺で、自分たちが食い散らかしたサケの残りをその連中が拾っている姿を見た気がする。今見るよりずっと地味な姿をしていたし、うるさくもなかった。互いに警戒する必要もなく、森の仲間として悪い相手ではなかった」。
アイヌ民族を暗示しているようですが、少なくとも野鳥に接するときはアイヌの人々を見習いたいものです。
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