ある女子大の寮の周辺で夜な夜な口笛を吹く不審者がいるという通報が警察に入りました。また、山梨県のある地域で「幽霊の声が聞こえる」という噂が広がり、子どもたちが夜トイレに行けなくなりました。
さらに、神奈川県丹沢近くの温泉で毎晩UFOのような音がするという騒動がありました。警察が調べたところ、いずれも犯人はトラツグミだったそうです。
この鳥は「ヒョー、ヒョー」と不気味な声で鳴き、時には「キーン」という金属的な音に聞こえます。それが不審者の口笛や幽霊の声、UFOの音と勘違いされたのです。
その声は入っていませんが、下は一昨年の4月に京都御苑で撮ったトラツグミ。
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丹沢のUFO騒ぎについては作家の渋澤龍彦も以下のように言及しています。
「このニュースを読んで、私は思わずにやりとした。私は北鎌倉の円覚寺の裏山に住んでいるが、じつは、もう数年も前から、毎年のように、この季節に.トラツグミの鳴声を聞いているのである。明け方に近く、「ヒョー、ヒー」という声がする。最初のうちは、どこかで誰かが、深夜にブランコにでも乗っているのかと思った。アンマさんの笛のようだとも思った。じつに不気味な、何とも寂しい声である」。
トラツグミの声による騒動は今に始まったことではなくて、『平家物語』にも「妖怪ヌエ」として登場することはご存知のとおり。
ちなみに、渋澤龍彦はその鳴き声について以下のようにも書いています。
「四月から五月の繁殖期にかけて、しきりに鳴くが、「ヒョー」と鳴くのが雄であり、「ヒー」と鳴くのが雌である。雌雄の二羽が呼び交わすように「ヒョー、ヒー」と鳴く」。
この記述は本当かな?と思って、蒲谷鶴彦さんの『日本野鳥大鑑鳴き声333』で確認すると、そういう俗説がある一方、否定する報告もあって、「野外における観察例、飼育下の記録はともになく、この習性の有無は不明。(中略・雌雄同色なので)姿を見ても雄か雌かわからないので、どちらの説が正しいのかは残念ながらわからない」そうです。
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