以前、受刑者の更生に鳥が役立っていることをご紹介しましたが、それと似た話で、ある囚人が獄中で鳥類学の世界的権威になったという実話があります。
1909年のアメリカ、ロバート・ストラウドという人物が、恋人に乱暴した男を殺して12年の懲役刑を受けます。獄中でも、母親を侮辱した囚人を傷つけた上に、看守を刺し殺したため死刑を宣告されます。
ある日、ストラウドは中庭で嵐に打たれてズブ濡れになったスズメを拾い上げ、独房に持ち込んで世話をしたり、芸を仕込んだりします。
そこから鳥への愛情が芽生え、鳥の専門書を読んだり、許可を得てカナリヤを飼い、観察や研究を続けます。そして、独房内に鳥小屋や研究室を設けることも特別に許可されます。
その結果、カナリヤの熱病の治療法を発見。その論文を雑誌に発表したことで、ストラウドは鳥類学者として認められます。
この実話は映画化されています。ロバート・ストラウドを演じるのはバート・ランカスター、映画の邦題は『終身犯』。You Tubeにその一部がアップされています。
その後も、獄中にありながら鳥のさまざまな病気の治療法を発見し、鳥類の病理学に関する国際的な権威になります。その実績が評価されて、死刑から終身刑に減刑されます。
最終的には有名なアルカトラズに収容されますが、病気のため連邦刑務所メディカルセンターに移送されて1963年に76歳で亡くなります。映画の原題は『Birdman of Alcatraz』、直訳すれば「アルカトラズの鳥男」。
この獄中の鳥類学者が生きていたら、鳥インフルエンザの治療法を発見していたかも知れませんね。
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