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タカの季節感

初夢のベスト3は「一富士、二鷹、三なすび」とされていますが、その由来について、徳川家康が富士山と鷹狩りと初物のナスを好んだからという説があるそうです。
この「鷹狩り」は俳句の季語では冬。鷹狩りは主に冬に行われたからのようです。
どういうわけか、「鷹」そのものも冬の季語。オオタカもハイタカも1年中いますが、冬になると里に出てくることが多いからでしょうか。
あるいは、冬になると農地や河川敷に現れるノスリがそうさせたのかも知れません。私もこの冬、ノスリを何度も観察することができました。

    

「鷹」や「鷹狩り」が冬の季語である一方、「鷹渡る」や「鷹柱」は秋の季語になっています。
鷹を季語にした俳句はたくさんあります。例えば、芭蕉の次の一句。
鷹ひとつ 見つけてうれし いらこ崎
芭蕉が弟子を訪ねて渥美半島の村へ行ったときに詠んだものです。バードウォッチャーなら秋のタカの渡りで有名な伊良湖岬を思い起こすはず。
ところが、これが詠まれたのは貞享4年(1687年)11月12日、新暦では12月中旬頃。芭蕉は冬の季語として「鷹」を使っていて、秋の渡りのタカを詠んだわけではないのです。
話はさらにややこしくなりますが、芭蕉は西行法師の次の短歌に触発されて詠んでいます。
巣鷹渡る 伊良胡が崎を疑ひて なほ木に帰る山がへりかな
「巣鷹」はヒナのときに捕えた鷹、「山がへり」は2歳以降に捕えた鷹。西行は、「伊良湖の海を2羽の鷹に渡らせようとしたところ、1羽は渡ったのに、もう1羽は木に止まったまま渡ろうとしない」という地元民の話を聞いてこの歌を詠んだそうです。
つまり、西行の短歌は秋の渡りのタカを、芭蕉の俳句は冬のタカを詠んでいるわけです。種類で言えば、西行が詠んだのはサシバかハチクマ、ノスリの可能性もあります。一方、芭蕉が詠んだのはノスリかオオタカ、チュウヒ、あるいはクマタカかも知れません。
いずれにしても、俳句に出てくるタカの季節感は、私たちの感覚と違うようです。

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