文房具やお香の老舗「鳩居堂」は創業が1663年だそうですから、今年でちょうど350年。京都が本店ですが、現在は銀座や横浜、東京スカイツリーにもお店があります。この「鳩が居る」という屋号には何かいわれがありそうなので調べてみました。
同社のwebサイトよると、現在地(寺町・本能寺前)で薬種商を始めた際、創業家の家紋が「向い鳩」であったことから、ある儒学者が中国最古の詩集『詩経』の一編にある「維鵲有巣、維鳩居之」から命名したとのこと。
鳩居堂のマークは家紋の「向い鳩」
漢詩の意味は、「カササギの巣があり、そこに鳩が居る」。ハトは巣づくりが下手なのでカササギの巣に住んでいる、つまり「借家住まい」という意味だそうです。
その後、4代目がある人に「100年以上自分の店舗で営業しているのに、借家住まいという屋号はおかしいではないか」と尋ねられました。返答に困った主人が、親交のあった儒学者・頼山陽に相談すると、以下のような答えが返ってきました。
「家も国も自分一代で成ったものではなく、先祖代々受け継いできたもの。いわば先祖の家に借家住まいしている。国家や商売が衰え滅びるのは、それを忘れて自分のものと思い、過ちを犯すからである。先祖からの預かり物だと思えば決して疎かにせず、つぶれることもない。鳩居堂はその名の如く、店を自分のものと思わず慎み深くやっているからこそ繁盛している」。
さすが頼山陽、うまいこといいますね。
この店舗は借家ということですね(笑)
ところで、同社のwebサイトには「カササギの巣に託卵する鳩に、「店はお客様のもの」という謙譲の意を込めたものです」という一文がありますが、ハトが托卵することはあるのでしょうか?
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