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改むるに憚ることなかれ

一昨年、日本鳥学会が野鳥の分類にDNAの知見を取り入れて、新しい鳥類目録を発表しました。順番が変わったり、これまでとは異なる仲間(属)に移籍されたり、バードウォッチャーは大混乱。いまだに新分類が頭にインストールできていない方が多いのではないでしょうか。
属が変わるということは、属名と種小名から成る学名も変わります。中には、なぜか種小名だけ変更された鳥もいます。例えば、シジュウカラはParus majorがParus minorへ、(大リーガーみたいに)メジャーからマイナーに格下げ(?)になっています。
それなら、これまで間違ったまま使われてきた学名も訂正されたのだろうと思って確認しました。例えば、コマドリの種小名がakahige、アカヒゲの種小名がkomadoriとなっていますが、これは江戸時代にシーボルトがオランダに標本を送る際にラベルを貼り間違えたために入れ替ったと言われています。コマドリは学問上は「アカヒゲ」という名前なのです。

    

ところが、新しい目録でもこの間違いは訂正されていません。コマドリの旧学名はErithacus akahige、新学名はLuscinia akahige。つまり、属名は修正されているのに、種小名は間違ったままなのです。アカヒゲも同様。
この2種だけでなく、ミゾゴイの種小名goisagiも間違いですが、こちらも訂正されていません。つまり、学問上はミゾゴイが「ゴイサギ」なのです。ちなみにゴイサギの種小名はnycticorax。こちらは入れ替っているわけではありません。

    

野鳥録音の第一人者、松田道生さんが日本野鳥の会の職員だったころ、ショップに「お宅の図鑑は間違っている」とクレームをつけに来たお客さんがいたそうです。話を聞くと、「コマドリの学名がアカヒゲになっている」とのこと。学名のミスはこういう罪作りをするわけです。
子どもの頃、「過ちては改むるに憚(はばか)ることなかれ」と教えられました。コマドリとアカヒゲ、ミゾゴイの学名は明らかに過ちなわけですから、改めることを憚ってはいけないと思いますが、学会はそういう感覚を持ち合わせていないのでしょうか。

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