小林一茶がこんな俳句を詠んでいます。
むずかしや どれが四十雀 五十雀
シジュウカラとゴジュウカラの識別が難しいと言うのです。しかし、バードウォッチャーなら、この2種の識別は簡単なはず。体形も色も違うのですぐに分かります。
一茶は鳥の識別にはあまり関心がなかったのかも知れません。その一方で、鳥への愛情があふれる句を残しています。例えば、有名な次の2句。
雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る
われと来て 遊べや 親のない雀
いずれもスズメに対する優しいまなざしが感じられます。
また、ウグイスについて、こんな句を残しています。
鶯に あてがつておく 垣根かな
「ウグイスが居付いたので、わが家の垣根を勝手に使わせておこう」という句です。
ガンにも優しい言葉を投げかけます。
けふ(今日)からは 日本の雁(かり)ぞ 楽に寝よ
「はるばると渡ってきた雁よ、今日からは日本の雁だ。安心してゆっくり眠れ」と詠んでいます。
そして、俳句の題材によく採り上げられるホトトギスでは…。
そっと鳴け 隣は武士ぞ 時鳥(ほととぎす)
「大きな声で鳴くと切り殺されるから、小さい声で鳴け」と忠告しているのです。いずれも、鳥に対する温かい思いやりが伝わってきます。
ちなみに、芭蕉もシジュウカラを詠んでいます。
老いの名の ありとも知らで 四十雀
当時は40歳は初老。「老人という名が付いていることも知らないで、シジュウカラは呑気に動き回っている」という句です。理知的ですが、一茶のような鳥に対する愛情は感じられません。
ちなみに、シジュウカラはその渋いオリーブ色の体色から初老の40歳に、ゴジュウカラはさらに年寄り臭い灰色なので中老の50歳に例えられたという語源説があります。
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