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トモエガモとシマアジ

京都支部では今年もガンカモ調査を実施しましたが、総数は昨年より約800羽多い18,550羽でした。その中でも珍しいのがトモエガモで、昨年は6羽、今年は11羽しか記録されていません。

    

日本に渡ってくるカモはほとんどが「~ガモ」「~ハジロ」「~アイサ」という名前ですが、1種類だけ妙な名前のカモがいます。魚と誤解される「シマアジ」。
長い間この違和感のある名前が心の奥にひっかかっていましたが、たまたまトモエガモのことを調べていてそれが氷解しました。
まず、西行がトモエガモを題材にしたという歌を紹介します。
とぢそむる 氷をいかにいとふらむ あぢ群渡る 諏訪のみづうみ
「あぢ」はトモエガモの古名だそうで、水面が凍った諏訪湖の上をトモエガモの群れが渡って行く様子を歌いながら、盛り上がった氷を「御神渡り(おみわたり)」とする諏訪地方の言い伝えをダブらせています。
つまり、シマアジの「アジ」はトモエガモ、「シマ」は「珍しい」という意味の接頭語なので、シマアジは「珍しいトモエガモ」という意味らしいのです。
Wikipediaなどは「シマアジ」を「縞味」と表記し、「白い縞模様がある味の良いカモ」という説を引いています。当て字の漢字を鵜呑みにするとこういういいかげんな語源説が出てきます。
それはさておき、「シマアジ=珍しいトモエガモ」説もよく考えると不自然です。昔もトモエガモは少なかったはずで、その珍しいカモを例に出してさらに「珍しいトモエガモ」と名づけるとは思えません。第一、シマアジとトモエガモは似ていません。

            シマアジ(photo by Dick Daniels)

「あぢ」はトモエガモではなく、カモの古名ではないでしょうか。シマアジはトモエガモ以上に珍しいカモですから、「珍しいカモ」と呼んだのでしょう。
西行がわざわざトモエガモを同定して詠むのも変な話で、「あぢ=カモ」と解釈した方が自然です。
「あぢ=トモエガモ」と判断した言語学者は野鳥に疎かったのでしょうね。

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