『南総里見八犬伝』で知られる江戸時代の作家・滝沢馬琴は鳥が大好きだったようです。と言っても、バードウォッチングではなく、飼い鳥の愛好家として。
「原稿料だけで生計を立てた日本で最初の作家」と言われるように相当な売れっ子で、毎日執筆に明け暮れ、そのストレスを和らげるために鳥を飼い始めたのがきっかけ。日記には次のように記しています。
「吾今、筆硯(ひっけん)の為に繁れて保養に由なし。小鳥などの活物を座右に在らせて、常にその運動を見るならば、気を散じて宜しかるべしと思ひしかば、紅鷽(てりうそ)を求め得て、その籠を書斎の窓に掛けたりしに…」。
忙しくて筆と硯だけの日々なので、小鳥でも飼って気晴らししようと思って雄のウソを飼ったというわけです。
京都支部ホームページ「野鳥図鑑」より
このウソをきっかけに馬琴は飼い鳥にのめり込みます。その年の冬にはウソのメスを買い入れ、翌年には次々と種類を増やします。売れっ子作家が飼い鳥ファンだと聞きつけた鳥屋がひっきりなしに売り込みに来るという事情もあったようです。
数年後にはウソのほか、メジロ、キクイタダキ、ヨシキリ、サンコウチョウ、カナリア、ホトトギス、カッコウに加えて、コガモ、オシドリ、バン、シギなどの水鳥も飼っていたそうです。
特にハトに執着し、キジバト、アオバト、ドバト、キンバト、ギンバト、シラコバトなどハトだけで8種類17羽も飼っていました。
ところが、100羽以上にもなると世話も大変で、餌代もバカにならなくなり、鳥籠の置き場所にも困るようになって急に我に返り、カナリアだけを残してほとんどの鳥を売り払ったそうです。
次の観察会は「探鳥会案内」をクリック