落語の中には野鳥を題材にした演目がいくつかあります。
例えば「鶴」。「ツーと飛んできてルーと木に止まるからツルと呼ぶようになった」という他愛もない話です。
「抜け雀」という演目もあります。ある男が旅館の代金を払えないので、襖に雀の絵を描きます。その雀が朝になると襖から飛び出して外で遊び、夕方になると戻って絵に収まる。それが評判になって旅館は大繁盛するうえに、お殿様が雀の絵を大金で買い上げる話まで舞い込むというお話。
オチは演者によって異なるようですが、桂米朝の場合は、後日その絵描きの親が現れて、雀が飛び立たないように籠を描き加えます。それを見た息子が「親に籠描き(駕籠かき=雲助のシャレ)をさせてしまった」と悔いるというオチ。
落語らしい演目は「鷺取り」。ある男が鳥を捕まえて金を稼ごうとします。雀でも鶯でも失敗したので、ご隠居に教えを乞うて、夜中、池で眠っている鷺を取りに出かけます。簡単に捕まるので、調子にのってたくさんの鷺を取って首を帯に差し込みます。
鷺としか表現されていませんが、多分コサギのことでしょう。
ところが、朝になって鷺が目を覚まし、いっせいに羽ばたいたので、男は空中へ運ばれます。目の前に現れた鉄の棒につかまって助かったものの、五重塔のてっぺんだったというお話。
上方落語では天王寺の五重塔ですが、江戸落語では浅草寺の五重塔になっています。
この男が考え出した雀の捕獲法は、こぼれ梅(味醂の搾りカス)を地面にまき、それを食べた雀が酔った頃に殻付きの落花生をばらまいて、雀が枕代わりにして眠ったところを一網打尽にするというもの。
鶯の捕獲法は、梅の木のような色糊を塗りたくった腕を天窓から突き出し、止まった鶯を捕まえるというもの。いずれも荒唐無稽で、いかにも落語らしい展開。
落語そのものも面白いですが、昔の人の野鳥観察の視点がうかがえて面白いですね。
次の観察会は「探鳥会案内」をクリック