美しい声で鳴く鳥はたくさんいますが、そうでない鳥もけっこういます。濁った声のカケス、けたたましいコジュケイ、どこに行っても「ピーヨピーヨ」とうるさいヒヨドリ。そして、夏になると河川敷で「ギョギョシ、ギョギョシ」とさえずるオオヨシキリもその仲間。
昔の人はオオヨシキリをその鳴き声から「行々子」と呼んでいましたが、「仰々しい」というニュアンスも含めていたのではないでしょうか。しかも、この鳥は夜中にも鳴きます。
「行々子」は俳句では夏の季語。例えば、芭蕉には次の1句があります。
能なしの眠たし我を行々子
「何の能もない上にただ眠たいだけの私に、オオヨシキリが鳴きたてる。お願いだから静かに寝させておくれ」というような意味らしいです。
この句は『嵯峨日記』に収められているので、当時の嵐山周辺ではオオヨシキリがたくさん繁殖していたのでしょう。芭蕉にとっては、昼も夜も鳴いて安眠を邪魔するうるさい鳥だったわけです。
一茶も次の俳句を残しています。
行々子大河はしんと流れけり
こちらは、オオヨシキリのうるさい声と静かに流れる川を対比させた句。
夏の暑い日差しが照りつける河川敷ではヨシが緑色に茂り、その中から「ギョギョシ、ギョギョシ」の声が聞こえる。その横で、川の水は音もなくゆったりと流れている。そんな風景が思い浮かびます。
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