ツチイナゴ Patanga japonica イナゴ科 (幼虫)
本会はいつも 8月の最終土曜日に開催してるが、こんなに暑い日はなかった。阪急松尾駅近くの温度計は 33℃を示している。その上、集合地では陽を遮るものは何もない。参加者 12人、ぼやきながら松尾橋下の自転車・歩行者共用の道に出る。ここでスズムシを聴くのは初めてだ。ずっと、ここはマツムシの領分であったはずなのに、いつの間にか入れ換わってしまったようだ。加えて、オナガササキリも鳴いているという。だが、か弱い 5kHzを超える声には、わが耳が難聴となってしまっている。
本探虫会は、長いこと平安期の女房や殿上人を気取って “鳴き虫” に拘泥(こうでい)してきたが、今年は見聞する “生き物” すべてに注目することにした。エンマコオロギやミツカドコオロギに耳を傾けながら、目には柳に纏わりつくコムラサキや、アキニレをバックにキラキラ輝くウラギンシジミ(蝶)を追う。道脇の花壇のランタナでアカタテハが蜜を吸っている。草むらに張られた網の主、ナガコガネグモを初めて見て、その模様と色彩の美しさに感嘆した人も多かった。誰かがショウリョウバッタを捕らえてきた。茶色の縦筋が何本も入った美しい個体だ。そうそう、出発直後、駅舎近くの楠の枝に、細長くてスマートなアオスジアゲハの蛹(さなぎ)があった。しかし、寄生蜂にやられた死骸に違いない。蜂の成虫が飛び出した穴が開いているのだ。
ウズラカメムシ Aelia fieberi カメムシ科
柳の木の上を緩(ゆる)やかにチョウトンボが飛ぶ。その近くをタマムシが不格好な姿で飛び回った。オオスカシバ(スズメガの一種)もやって来た。誰かが大きな蜂だと思ってたじろいだ。6年前、道沿いのクズの葉を黄色に枯らしていたオオメオナガカメムシが、今年も多数いた。しかし葉を枯らすほどではない。ヒトスジシマカも出現した。ただし、これは、いつもお洒落な某氏が虫除けに履いたストッキングの上から吸血したことで見つかった。
植物で気になったものを挙げる。ある図鑑の筆者が「ラーメンをぶちまけたような」と表現したネナシカヅラである。皆、なるほどと納得する。茎の色と花の付き具合から、識者がアメリカネナシカヅラと同定した。
クビキリギス Euconocephalus thunbergi キリギリス科
喜ばしいことに、観察できた動植物の多彩さに、参加者だけでなく、講師も担当も十分に満足した探虫会となった。
嵐山探虫会 (8月25日) T. U wrote
●見聞きした昆虫(本文に登場した種を除く)
ハラオカメコオロギ、ツヅレサセコオロギ、クマコオロギ、シバスズ、ヒゲシロスズ、カネタタキ、ツユムシ、クビキリギス、ホシササキリ、イボバッタ、オンブバッタ、ツチイナゴ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミ、クマゼミ、ヤマトシジミ、イチモンジチョウ、イチモンジセセリ、ハグロトンボ、ウスバキトンボ、シオカラトンボ、ギンヤンマ、マルカメムシ、クサギカメムシ、ホソヘリカメムシ、マクバチ、フタモンアシナガバチ、ベッコウバチ(2種)、アオメアブ、アメンボ、セイタカアワダチソウグンバイ、ブタクサハムシ、オジロアシナガゾウムシ、その他
●見聞きした鳥
カワウ、ゴイサギ、ダイサギ、アオサギ、コサギ、トビ、キジバト、ツバメ、コシアカツバメ、セグロセキレイ、ヒヨドリ、メジロ、カワラヒワ、スズメ、ムクドリ、ハシボソガラス、ハシブトガラス 17種
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