ウグイスの「ホーホケキョ」は昔から日本人の心を強く捉えていたようで、清少納言も『枕草子』に次のように書いています。
「ウグイスは声もいいし、姿形もあんなに高貴で美しい。でも、宮中で鳴かないのはどういうわけだろう。10年ほど御所にお勤めしているのに、声を聞いたことがない。トビやカラスに見入ったり聞き入ったりする人はいないのに、ウグイスの声に聞き惚れるのは、春だけ鳴くからですね」。
声についての記述に異論はないですが、ウグイスの「姿形が高貴」というのは腑に落ちません。みなさんご存知のように、ウグイスはチョコマカとよく動く落ち着きのない鳥で、「高貴」とは言えないでしょう。下の動画は、典型的なさえずりではないですが、声も入っていますのでお聴きください。
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もう一つ気になるのは、メジロとの混同。清少納言はこうも書いています。
「御所には紅梅があって、ウグイスが通うのにふさわしい木なのにやってこない。庶民のみすぼらしい家の何てことはない梅の木では、うるさいくらいに鳴いているのに」。
バーダーならご存知のように、動物食のウグイスは梅の蜜を吸わないので、好んで梅の木にやってくることはありません。蜜を吸うために梅の木によくやってくるのはメジロ。
また、ウグイスは上の動画のように藪の中にひそんでいることがほとんどで、木の枝など目立つ場所にはあまり出てきません。
メジロと混同して「梅にウグイス」という固定観念ができあがったために、メジロの体色を「ウグイス色」と名づけたのではないでしょうか。
また、以前の記事「メジロ張り」でも考察したように、歩くと「キュルキュル」と鳴る廊下を「ウグイス張り」と言いますが、「キュルキュル」はメジロの警戒音。色でも音でもウグイスとメジロが混同されているようです。
清少納言に限らず昔の文筆家や歌人は、ほかの鳥についてもステレオタイプなイメージだけで書いているようなところがあって、「本当に鳥のことを知ったうえで書いているのだろうか?」と疑問になることがあります(関連記事クリック)。
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