サスペンス映画の巨匠・ヒッチコックの代表作の一つは『鳥』。カラスやカモメが人間を襲ったり、頑固で愚かな鳥類学者が登場したり、愛鳥家にとってはとんでもないストーリーです。
困ったことに、私はヒッチコックの大ファン。作品のほとんどを見ていますが、鳥仲間の前で「ヒッチコックのファンです」と公言するのは、江戸時代に「実はキリシタンです」とカミングアウトするほど勇気が要ります(笑)。
『鳥』を髣髴とさせるミヤマガラスの群れ(巨椋干拓田)
あの映画には原作があって、イギリスで実際に起きた事件が題材になっているそうです。ヒッチコックのインタビュー集『映画術』を読むと、面白いことが書いてあります。
「これがワシとかタカといった猛禽類だったら、映画化はしなかっただろう」。つまり、身近なカラスやカモメ、スズメがある日突然人間を襲うから恐怖感が深くなるということでしょう。
映画の撮影中にもロケ地のサンフランシスコでカラスの群れが子羊を襲う事件があったそうで、ヒッチコックはその牧場へ行って話を聞いています。映画の中に、カモメに襲われた農夫が眼球をえぐられて死んでいるという、ヒッチコックにしては珍しく凄惨なシーンがありますが、その子羊の話からヒントを得たそうです。
宇治川のユリカモメは人を襲いません
最近、鳥インフルエンザのために野鳥が白眼視されていますが、映画のような物理的な襲撃も化学的な襲撃も、人間に対する自然の復讐という面があるのではないでしょうか。
なお、『鳥』は東宝の「午前10時の映画祭・何度見てもすごい50本」にピックアップされていて、京都では明日からTOHOシネマズ二条で上映されます。
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