平成22年8月28日(土)に行われた三川樹木伐採調査に同行した。国土交通省近畿地方整備局 淀川河川事務所の案内で行われたこの調査には、事務所側から7名、日本野鳥の会京都からは調査保護部を中心に6名(以下会員)が参加した。今年度までに行われ伐採箇所の現状の調査と今年度伐採が計画されている箇所の視察および日本野鳥の会京都としての計画への提言を行うことが目的であった。
写真 1 菟道雅郎皇子御墓と撤去が計画されている宇治川中州。宇治川左岸より。
記録的な暑さの続く土曜の午後1時半に、事務所側から用意されたマイクロバスに中書島から乗り込み、まず中州撤去が計画されている宇治川の宇治橋下流を調査した。土手を挟んで、サギのコロニーとなっている菟道雅郎皇子(うじのわきいらつこ)御墓(写真1の中央の森、)があり、中州には多くのサギがいた。この菟道丸山地区河道堀削工事(施工予定期間は今年度10月から3月まで)計画では、宇治橋から下流へ約350m、宇治川右岸幅約50mに渡って深さ約1m土砂が取り除かれることになっている。サギがエサを捕まえるのに適当な中州および中州周りの浅場が掘削されることは、先のコロニーの壊滅に繋がることを強く提言した。
塔の島では、その上流部を掘削し河床を低くする計画のあることを事務所から説明を受けた。天ヶ瀬ダム放水量増加に伴う近辺の工事計画についてはまだ具体化されていない印象を受けた。その後、天ヶ瀬ダムの自然環境の現状を視察した。
写真2 御幸橋上流における過去の伐採箇所の現状
木津川唯一の調査地点である御幸橋上流部に移った。平成21年以前に伐採した箇所が、どのようになっているかを調査することが主な目的であった。写真2の右に少し写っている橋が御幸橋であり、対岸と手前のクズに覆い尽くされている箇所が以前伐採したところである。写真の左奥に伐採されなかった河川林が残っている。その違いは大きく、数年経っても自然環境の回復が難しいことを語っている。木津川上流には多くのダムがあることと最近の少雨のために、伐採箇所が水を被ることが無く、クズの蔓延りが止まないようである。また、ダムが土砂の流れを止めてしまうために、河床が低くなってしまい、伐採箇所にアシなどの水生植物が育ってこないことを、会員が説明した。写真2で見ると、対岸の伐採箇所が河床から1mほど高くなっているのがわかる。この垂直に近い壁は、カワセミの巣作りには適当なのかもしれないが、河川林の再生の難しさを感じる。対岸伐採部に伐採を逃れたヤマナシ(写真2では、御幸橋の左10m辺りに立っている)にも、クズが巻きついていた。その後で、京都競馬場に近い宇治川に移り、昨年(平成21年度)伐採した箇所と本年度の伐採予定箇所の比較を行った。その様子を写真3に示した。先の木津川の場合と同じく、伐採箇所にはクズが蔓延り、新たな樹木の生育を見ることはできない。対岸に見られる樹木の生い茂った林が、手前のクズに覆い尽くされたようになるのかと想像すると、防災のためとはいえ残念な思いを禁じえなかった。
写真 3 宇治川京都競馬場近辺における過去の伐採箇所(手前岸)と本年度の伐採計画箇所(対岸)
桂川は、まず大下津近辺の河道拡大予定地点と昨年度伐採が行われた箇所を調査した。宮前橋下流に当たるこの区域は、川幅が狭く人家を移転させての拡大工事は数十年来の計画だそうである。昨年伐採された河川には、やはりクズが蔓延り再生の兆しを見ることはできなかった。
写真 4 桂川右岸から見た久我井堰下流の本年度伐採計画箇所
最後の調査地点として行ったのは、久我井堰下流の本年度伐採計画箇所である。写真4では堰の手前に新しい橋ができている。対岸に見られる樹木が伐採されることになる。この辺りは、カンムリカイツブリが夏を越すので知られているが、この時は現れてはくれなかった。木陰で遊んでいるカルガモの一家を見ていると、水面をタカらしい鳥が飛んで川辺に下りた。双眼鏡で探してくれた会員から、「オオタカ」の声。事務所の方にも、双眼鏡でその姿を見てもらうことができた。伐採が行われると、猛禽類も姿を消してしまう可能性がある。川辺の木々を残して川面に木陰ができるようにしてほしいと、会員が提言していた。また、河川林には野鳥を初めとした野生動物がすんでいることを心に留めて工事をしていただきたいとの提言もあった。この時点で夕方の6時を過ぎていたので、予定していたJR東海道線近辺の調査は省略し、中書島に帰ってきたのは6時30分ごろであった。
はじめて、このような調査に同行させていただき、京都市を流れる河川の現況を目にすることができた。川の近くに住む人々の安全と自然保護の間の調整の難しさ、川辺の自然再生の難しさを感じた。事務所の方々の対応は丁寧で、会員の言葉に耳を傾け熱心にメモを取られていた。会員の提言も参考にされ、川辺の自然に考慮された伐採工事が行われることを期待する。(Y. I. wrote)
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