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キジバト

 どちらが雄なんでしょう、キジバトを研究してる人に繁殖期に 2羽でいるのはカップルだろうしい灰色っぽいのが雄だと聞きました。でもこの写真ではわからないということでした。野外で 2羽を比較しながら観察した時には判断できるようです。それも経験値にもとずいたものでしょう。やはり行動で見分けるのが確実で、囀り、ディスプレイ、巣材運びは雄がするようです。
 少しまえまでヤマバトって呼んでましたね、ヒヨドリやコゲラもそうですが、町で暮らしはじめたのはさほど昔でもなさそうです。こんな身近な野鳥をじっくり観察するのも楽しいかも知れません。

       (写真をクリックすると大きくなります)

キジバト Streptopelia orientalis Rufous Turtle Dove ハト目ハト科
亜種: 本土産のキジバト S. o. orientalis のほかにリュウキュウキジバト S. o. stimpsoni (奄美以南)
異名: てでぽぽ(岩手)、といた(アイヌ)、どばと(福島、神奈川、岐阜、長野、大阪)、やまばと(岩手、秋 田、宮城、新潟、茨城、山梨、長野、石川、兵庫、広島、愛媛、山口、福岡)、つちばと (岐阜)、まめばと(愛媛)、のばと(茨城、福島、長野)、さとば と(熊本)、つちく れ(高知)、からはと(鹿児島)、からぼーとーう(沖縄島)

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●キジバト

都市への進出
 かつてキジバトは、ヤマバトという名で親しまれていた。その名の通り農耕地から山地にかけての林におもに生息していたらしい。また警戒心が強く、人が近づくのは容易ではなかったという。大都市の中心部でもふつうに見かけ、人がすぐそばを通り過ぎても平気な現在のキジバトからは想像もできない話である。
 キジバトの都市への進出は1960年代に始まる。これには都市周辺での銃猟の制限がある程度影響しているとされる。1970に入ると大都市の中心部の街路樹でも、キジバトの繁殖が確認されるようになった。今でも山で生活するキジバトはいるが、現在のキジバトにヤマバトという名がふさわしいとは思えない。

巣造りと巣場所
 キジバトは樹の枝などを組み合わせた浅い皿型の巣を造って繁殖する。キジバトの巣は粗雑だという印象が強いが、粗雑とはいっても、100本から200本もの巣材からできている。巣を造るとき、巣材はすべて雄が一本ずつ運んでくる。あの粗雑な巣を造るために、雄は100回以上の往復をするのである。
 雌は、巣場所の予定地に座り込み、雄が運んできた巣材を受け取り、腹の下に巣材を差し込んで巣を組み立てていく。一から新しく巣を造るとき、自分の下に差し込んだ巣材がすぐ下に落ちてしまい、なかなか巣ができあがらないこともある。巣材が下に落ちたら拾えばいいようなものだが、落とした巣材を雌が拾うのを観察したことはない。
 こうして一から巣を造るのではなく、古巣を利用して繁殖することも多い。自分が以前に造った古巣だけではなく、他のつがいの造った古巣であっても利用する。それどころかヒヨドリ、モズ、クロツグミ、オナガなどの古巣を利用したという記録もある。古巣を利用する場合、そのまま卵を産んで繁殖を始める場合もあるようだが、多くの場合はある程度巣材を付け加えてから産卵する。何度も多くのつがいに利用された古巣の中には、再利用される度に巣材が付け加えられたため、キジバトの巣とは思えないほど、大きな巣になる場合がある。
 本来、樹上に巣をかけるキジバトだが、生息環境を都市へ広げてしばらくたった1970年代後半になると、人工建築物に巣をかけたという報告がされるようになった。人工建築物に巣をかけるようになったとはいっても、樹の枝上に巣をかけていた時と同じように、窓枠や配管の上など、何かの上に巣を造る傾向があると思われる。

食性
 ハト類はすべて植物質を主食にしており、キジバトもその例にもれず植物の果実、種子、花、芽などをおもに食べる。しかしミミズを飲み込んでいる姿を観察することもあり、胃の中を調べてみるとよく小さな貝や小石が入っている。
 樹木の果実はキジバトの主要な食物の一つである。果実を食べるとはいっても、ヒヨドリやムクドリが果肉めあてで種子は消化せずに糞やペリットとして出すのとは異なり、キジバトは種子も消化してしまう。植物の立場から見れば、種子散布に役立つヒヨドリやムクドリとは異なり、キジバトは大変迷惑な存在である。むしろキジバトは果肉ではなく種子がめあてで、ヒヨドリやムクドリが排出した種子をあさることも多い。

繁殖活動
 ハト類は、ピジョンミルクと呼ばれる分泌物を利用して雛を育てるため、雛の餌として昆虫などの動物質は必要としない。したがって繁殖期を昆虫などの発生時期にあわせる必要がなく、長い繁殖期を持つ傾向がある。キジバトも少なくとも南西日本では一年を通じて繁殖をすることができる。ただし、繁殖が盛んなのは初夏以降で、通常秋にピークに達する。
 繁殖は一夫一妻のつがいで行なう。つがい関係は一度形成されると、通常相手がいなくならない限り継続される。つがいは、繁殖を開始して片方が巣にずっといる場合を除けば、一緒に行動することが多い。
 抱卵や抱雛は、昼間は雄が、夜間は雌が行なう。雛の餌であるピジョンミルクは、哺乳類とは異なり雌雄共に分泌し、雄も雛への給餌を行なう。雛が成長するにつれて、雛の餌には穀物などが多く混ぜられるようになる。雛は孵化後約15日たてば、ある程度飛ぶことができ、巣立つことが可能になる。しかし、なかなか巣立たない場合も多く、孵化後20日以上たっても巣にとどまることがある。また巣立ったとしても、その後数日は、雛は巣の近くの樹にじっととまって親が餌をやりに来てくれるのを待っているだけである。時には再び巣に戻ってしまうこともある。

人との関わり
 農村では、昔からダイズやアズキなどの豆類に対する害鳥として注目され、その対策のための研究が多く行なわれている。
 一方、都市では、ドバトの群に混じり人の近くまできて餌をもらう姿も見かけるようになった。人の家の中まで平気で入ってきて餌をもらうという話もしばしば耳にする。都市での生息密度の高いドバトは、糞などによる被害もあり、人に嫌われることが多く、駆除が行なわれている。キジバトは今の所ドバトほど生息密度は高くなく、それほど嫌われてはいないらしい。むしろ庭木に巣をかけると喜ぶ人も多い。しかし今後、個体数が増え、ベランダなどでの繁殖も増え、人との接触の機会が増えてくると、人に喜ばれない存在になるのかもしれない。

    和田岳(1997) キジバト. 日本動物大百科(平凡社), 4.鳥類II:22-23.

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4件のコメント

  1. yurikamome0403

    Unknown
    会社の敷地内で時々ヤマバトを見かけます。
    よく見る最もポピュラーな鳩に比べて、ヤマバトは優しい目をしているという印象で、ちょっと惹きつけられます。
    ヤマバトとキジバトは同じものだったんですね。
    引用のキジバト記事(?)もとても興味深く読ませて頂きました。

  2. bulbul

    Unknown
    引用の記事を書いた人から「色が濃いんじゃなくて灰色っぽいのが雄だよ」と訂正が入りました。よく考えると濃いだけでは茶色が濃いともとれるわけでさっそく書き換えました。

  3. fayongou

    Unknown
    カモメに続き、続きを読むコーナー身近で興味のある解説、素晴らしいの一言”編集大変とは思いますが、次も、次も期待して待っています。

  4. bulbul

    Unknown
     そうです、「大変です」でも、
     「がんばって取材するぞ !!」(笑)の"燃料"はこういうお言葉です。心から嬉しくなってきます。

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